今日は歯科医師の小野寺です。
突然ですが歯に鈍い痛みがあって歯医者さんに通院しましたが、特に虫歯も問題ないし、歯周病も問題ないので様子をみてくださいなどと言われたことありませんか。
歯医者さん側でも虫歯も無いし、歯周病もそこまで炎症が強く無いので原因がわからないなと思う事があります。
もしかするとその原因は筋膜性歯痛だったかもしれません。
筋・筋膜性歯痛とは
顔や首の筋肉が疲労すると筋肉にしこりができ、血の巡りが悪くなりそこからの痛みが歯やあごの痛みとして感じられることがあります。
これを筋・筋膜性歯痛といいます。
歯が原因では無い歯の痛みを非歯原生歯痛と言いますがその多くが筋・筋膜性歯痛(45~50%)が原因で頭や首周りの筋肉からの筋・筋膜痛(筋肉痛)の合併症で歯痛が起こると言われております。
かみ合わせに関する筋肉
かみ合わせに関する筋肉は、咀嚼筋と呼ばれる手足にある筋と同じ骨格筋である筋肉が主に働きます。
この筋肉は下あごを上あごに対して上・下したり水平に移動したりすることによって、歯が食べ物をかみ切ったり、すりつぶしたりすることが出来るのです。
咀嚼筋の運動を咀嚼運動あるいは顎運動と呼びます。咀嚼筋では歯を食いしばった時に顎の外側で硬くなる筋肉を咬筋と呼び、硬い食べ物をかみ砕くときに働きます。こめかみには下顎を引き上げ(閉口)や顎を後方に引く時に働く扇形の側頭筋があります。
筋・筋膜性歯痛の原因
原因はかみ合わせに関与する咬筋、側頭筋を酷使したためにおこります。
不安や精神的緊張などのストレスによる神経の緊張が続くことによっておきることがあります。
睡眠時の歯ぎしりや、長時間のスマートフォンやパソコンの使用などは、かみ合わせに関与する筋肉を酷使するため注意が必要となります。
かみ合わせに関する咬筋、側頭筋が多いものの、首や肩の筋肉(胸鎖乳突筋、僧帽筋)が原因であることもあります。
筋・筋膜痛(筋肉痛)から歯痛が起こる関連痛
1.咬筋
2,側頭筋
3,胸鎖乳突筋
4,僧帽筋
筋・筋膜性歯痛の症状は?
いろいろな痛みが出ますが
- 鈍い痛みがずっと続いているがその歯をたたいても、何をしても痛みは出ない
- 痛みを生じやすいのは、主に上下の奥歯
- だいぶ前に歯を抜いて傷は良くなっているのに、もう無いはずの歯が痛い気がする
- どの歯が痛いのかよくわからない
- 痛みは日常生活には支障はない
痛みは筋肉の活動で増す傾向があります。痛みは軽いことが多いものの、時には強い痛みが生じることもあります。
筋・筋膜性歯痛の治療法
1)歯科医院で行う治療
1,カウンセリング、認知行動療法
痛みに対して歯以外の可能性を探り、思いがけない癖(食いしばりなど)があることを認識します。そして生活環境の改善を行ったりする事が治療につながります。これは副作用もなく、効果も高いと言われています。
2,マウスピースの作成
歯ぎしりや食いしばりが原因で筋・筋膜性歯痛を起きている場合にはマウスピースを作成し、使用してもらいます。
3,薬物療法
痛みが継続してある場合や痛みが強い場合には鎮痛薬を使用します。カロナールやロキソニンなどの薬を患者さんの全身状態を考慮しながら処方します。
4,トリガーポイントブロック
原因と思われる筋肉のさらに1番痛い場所(トリガーポイントや圧痛点)に局所麻酔をおこないます。そうする事で痛みが一時的に消失しますが継続治療が必要です。
2)ご自宅で行える治療
1,食事
食事では硬い食べ物や繊維質の食べ物などの摂取を控えます。
強くかんだときに歯がすべり、筋肉にダメージを与えると考えられています。
原因が筋肉痛のため、長時間かまないことも大切です。
2,マッサージや温熱療法
筋肉の血行不良やしこりが原因のためマッサージが有効です。ご自身でも出来ますし、整体院に通院し、施術を行うのもよいと思います。
また、血行不良に関しては痛い場所を温かいタオルやお風呂で温める事も有効です。
まとめ
筋・筋膜性歯痛には色々な症状や原因があり、診断が難しいです。
歯医者さんで歯や歯茎に問題がないと言われた時にはお口の中だけでなく他にも原因があるかもしれませんので、是非かかりつけの先生に相談していただければと思います。